当てにいくから「誤訳」すると実感した話

ある企業の部長と話をしていた時の話。

あまり詳細に書くとどこの企業の話か分かるので、少し分かりにくいと思うがご了承いただきたい。

「ウチの社長はこういう表現は嫌いなんですよ。だから、社長に提案資料では使わないように気をつけているんです。」

表現自体に何の問題もないと感じたので率直に理由を尋ねると、こう返ってきた。

「以前の社長提案の時に、こういう表現するのは本質を理解できていなからだ!って社長に激怒された人がいて。。。それから全員使わないようにしたんです。」

後日、社長に確認したのですが、激怒した理由は、あくまで「本質を理解できていない」ことであって表現の問題ではないのです。が、組織ではこのようにトップの意見が「誤訳」され、暗黙のルールとなっていくことがよくある。

なぜ部長は、社長の意見を「誤訳」したのか?

以前から暗黙のルールの多い会社だと感じていたので、この出来事はその原因を悟らせるには十分な体験であった。

この部長に限らず、この会社の幹部層は全員と言っていいほど頭の良い優秀と言える人たちなのだが、一点気になる点があった。新しいことを試すことを躊躇する、失敗を極端に恐れる人たちなのだ。

社長自身は新しいチャレンジ意欲旺盛ですが、幹部層にスピード感がないことについて悩んでおられました。

しかしながら、部長に社長について聞くと正反対の悩みを持っていたのだ。

「社長が一度でも反対意見を出すと、ストップしてしまうんです。とくに新規の提案には非常に慎重なので、競合に出遅れることが多いんです。」

原因はボタンの掛け違いが悪循環を生んでいる、つまり、社長が反対すると止まってしまうので、社長に反対され怒られないようにすることが幹部層にとって最重要項目になってしまっていたのだ。

そして社長に反対される表現は使わないなど、暗黙のルールが積み重なり、そのルールに縛られ、本質からかけ離れていく、ますますの悪循環だ。

「誤訳」は誰の責任か?

そもそも組織におけるコミュニケーションの真の目的は、相手の行動が変化することである。

つまり、コミュニケーションの成否は、受信側が変わるかどうかであり、発信側の責任だ。

この場合で言えば、社長の責任というわけだ。

社長の激怒の理由が正しく伝わっていないことが第一の原因だ。

しかし、もっと根深い問題である悪循環の原因は、社長のこれまでの評価と表現にある。

怒られないことを重視する人たちを評価し登用していることになる。また、怒られないことを重視する人を作ってしまった原因は、激怒という表現方法を多用することにある。

怒られないように当てにいく部下は怒るから発生するのだ。

時には怒ることももちろんリーダーには必要であるし、部下の提案を否定し嫌われ役になることも必要だ。しかしながら、それは組織の核であるリーダーの意識の高さ、熱さが部下に伝導することで成立する。

リーダーの熱さから距離をとるようなことはあってはならないのだ。

ミドルの役割は「翻訳」

ミドル・マネージャーは組織、そしてリーダーの価値観、戦略をボトムに分かるように「翻訳」し、実行につなげることだ。

決して「社長が言っていたから」「社長が怒るから」など、自分の言葉に翻訳せずに「原文」のまま伝えてはいけない。自分の言葉で翻訳することが、ミドルの存在意義であり、そうすることで後々リーダーになる訓練になるのだ。

そして、リーダーは「翻訳」が正しく行われているか、確認しなければならない。戦略がどれだけ実行されているか、がその答えだ。

今回の例であれば、スピード感のなさはトップ、ミドルともに同じ悩みにもかかわらず、正反対の理解をしていた。

このような組織ではお互いの認識を合わせることから始めなければいけない。そのためには原文が正確であることが第一歩だ。そして、トップは原文を行動変化が起こるまで何度も繰り返し伝えなければならない覚悟をしなければならない。

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