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「本気でゴールを達成したい人とチームのためのOKR」を図解で徹底解説!

おかげさまで、発売以来「本気でゴールを達成したい人とチームのためのOKR」は多くの方にお読みいただいております。OKR導入、運用はもちろんにチームづくりの参考にしていただきたく、ポイントを図解も交えて、著者である奥田が解説いたします。

はじめに

リーダーは誰しも「理想」をもったことがあります。しかしながら、現実に起こる厳しい問題にぶつかると、いつしか「現実」にのみ目を向けてしまいます。しかしながら、リーダーが「理想」を掲げてこそ、チームが躍動します。

だからこそ、リーダーは「理想」を掲げてチームを鼓舞する同時に、現実に成果を上げなければなりません。そのためのマネジメントの仕組みが「OKR(Objectives and Key Results)」です。OKRを用いれば、カリスマや天才的なリーダーだけでなく、一般的なリーダーであっても「理想」と「現実」を同時に追求できると考えています。

 

第1章 今こそ、組織の時代

終身雇用、年功序列などの日本的経営慣習が崩れ、副業、フリーランスなど様々な働き方が注目されています。まさに「個の時代」が来ていると言われています。

しかしながら、私は今後も「組織の力」が欠かせないと考えています。組織の不合理、デメリットに注目が集まることがあります。しかしながら一人では達成できない成果を残すためには、組織には大きな可能性があると信じています。

とは言え、組織にいると、組織に対してネガティブな感情「もやもや」を抱くことがあります。

私は平社員➡経営者➡中間管理職と珍しい道を歩んできました。すると、どの階層にいたとしても「もやもや」を抱えることが分かりました。

経営者は「もっと経営者視点をもってほしい・・・」
中間管理職は「部下が指示待ちだ・・・」
部下は「もっときちんと指示を出してほしい・・・」

などなど、組織にいるとどうしても「もやもや」が生じてしまいます。

にもかかわらず、なぜ組織と言う形態が存在し続けているのでしょうか?それは組織の中に「わくわく」があるからです。組織の「わくわく」が「もやもや」を上回るようにするにはどうすればよいでしょうか?

まず「わくわく」について考えてみましょう。

「わくわく」は未来に対して期待や喜びを抱いたときに湧き上がる感情です。「わくわく」の効果はチャレンジの促進やストレスへの耐性などがあります。会社に行くための早起きは億劫でも、旅行や遊びのためであれば喜んで早起きできる人は多いのではないでしょうか?

つまり、目的こそが「わくわく」の源泉であり、自分を成長させる重要な要素になります。

しかしながら、「組織の目的」が「自分の目的」と必ずしも合うわけではないでしょう。
そのようなときは、まずは与えられた仕事に対して、自分で意義や目的を考えてみましょう。「自分の目的」は外部要因や他人の影響によって変化します。合わないと思ってもまずはトライしてみることが大切です。

 

第2章 組織力の公式

そもそも組織とは何でしょうか?

ただ、複数の人が集まっているだけではただの集団です。集団ではなく組織に必要なものが共通の目的です。
では、同じ映画を見る目的で映画館に集まる人は組織でしょうか?もちろん組織ではありません。
なぜなら共通の目的「映画を見る」は、一人で達成できるからです。

つまり、個人では達成できない大きな目的を、複数の人が協力して目指すからこそ「組織」なのです。

組織が共通の目的に向かう力が「組織力」です。

以前TV番組で、綱引きでは筋骨隆々のプロレスラーチームに綱引きの強豪女性チームが勝つシーンを見たことがあります。個人個人で比べるとプロレスラーが圧倒的に強いですが、チームで勝負すると女性チームが勝ったのです。

つまり、組織力は「個人の力の単純合計」ではありません。「個人の力の単純合計」に「相乗効果(正も負も)」を加えたものが、組織力になります。

では、組織力を上げるにはどうすれば良いのでしょうか?

まず、個人の力について考えましょう。
個人の力は、その人の持っているスポテンシャルが「最大出力」と、それをどれだけ出力できるかを示す「発揮率」の掛け算になります。

「最大出力」を上げるためには、高い目標を設定して、振り返りを行うことが大切です。背伸びして届くかどうかのストレッチゾーンに目標を設定します。そして設定した目標に対して、自分で振り返る「内省」と上司による内省支援である「フィードバック」を繰り返すことで、「最大出力」は上がっていきます。

次に「発揮率」は上げるには、エンゲージメントを高めなければいけません。エンゲージメントとはタワーズワトソンの定義によると「企業の目的、目標を理解し、自発的に自分の力を発揮する貢献意欲」のことです。エンゲージメントを高めるためにはエンパワーメント、つまり個人の能力、意欲を最大限引き出し、自発的に仕事を進める力や権限与えることが必要です。

もう一つの組織力を構成する要素「相乗効果」には、組織力にプラスをもたらす「正の相乗効果」とマイナスをもたらす「負の相乗効果」があります。

組織には様々なメンバーがいる、つまり「多様性」が相乗効果を生み出します。組織力を高めるには多様性のメリットを最大化し、デメリットを最小化することが不可欠です。

多様性のメリットを最大化するためには「心理的安全性」が欠かせません。多様性に富む組織ほどイノベーションが生まれやすいなど創造性、革新性が高まります。

しかしながら、いくら多様性に富んでいても、多様な意見や考え方を自由に発することができなければ、メリットは享受できません。「こんなこと言ったらマズイかな」と一見思うかもしれないことでも、「このチームなら大丈夫!」と考えることができる状態、つまり心理的安全性が高い状態が多様性のメリットを享受するためには大切です。

一方、多様性のデメリットを最小化するために、一番大切なことは「多様であってはならないもの」を明確にすることです。

まず「共通の目的」は多様であってはなりません。働く人、働き方が多様になるからこそ、組織に不可欠な「共通の目的」は明確でなければいけないのです。言語化して、繰り返し伝えることで、組織のベクトルを合わせなければ、組織はバラバラになってしまいます。

また、「規律」も多様であってはいけません。組織において信頼関係は重要なため、「信頼できない」の最低ラインである「規律」を明確にすることが不可欠です。多様性があると道徳観、価値観も人により異なります。だからこそ、最低のライン「規律」を言語化して明確にする必要があります。

 

第3章 変えるべきは意識ではなく、仕組み

組織の共通の目的を協力して目指すために「目標管理」があります。そのためほとんどの日本企業で何らかの目標管理が導入されています。しかしながら、うまく機能していないのが現状です。
なぜ目標管理はうまくいかないのでしょうか?

 

目標の形骸化

目標管理を行っているにもかかわらず、目標そのものが形骸化してしまっているため、うまく機能しません

・目標設定の提出期限が来て慌ててその場しのぎで目標設定をしてしまう
・3~6か月に一度の中間面談時しか目標を意識しないので忘れてしまう
・設定した時点からの状況変化が大きく、当初目標では評価できない
このようなことから、せっかく目標管理を導入していても、実際は目標が形骸化しています。

目的共有がない

レンガ積みの寓話はご存じでしょうか?
レンガを積んでいる人に「何をしているのですか?」と尋ねました。
「レンガを積んでいる」
「生活のために働いている」
「後世に残る大聖堂を作っている」

この寓話からわかるように、目的を理解し共有することで、意欲も生産性も高まりますにもかかわらず、目的の共有がないまま目標だけを設定、管理していませんか?それでは、目標管理はうまく機能しません。。にもかかわらず、目的の共有がないまま目標だけを設定、管理していませんか?それでは、目標管理はうまく機能しません。

目標の個別管理

現状の目標管理は多くの場合、目標は上司と部下の間だけで個別に管理されています。
そのため、メンバー同士は互いに目標やその進捗を知ることができず、他のメンバーや部署に関心がなくなります。さらには、信頼関係までも損なわれます。「自分は頑張っているのに、周りは何をしているのか?」と疑心暗鬼まで生まれてしまいます。

その結果、共通の目的達成に不可欠な協力が生まれない組織になってしまいます。

挑戦が評価されない

挑戦、チャレンジは不可欠だと誰もが思っていますが、実際にはそのようなメンバーが多く生まれる企業は稀です。なぜなら、挑戦を評価する仕組みがないからです。

例えば、前年実績200%と挑戦的な目標設定をしたAさんと、前年並み100%と保守的な目標設定したBさんがいたとしましょう。Aさんは前年150%と大きく上回ったが目標未達成、Bさんは前年120%の実績を残した場合、どのような評価がされるでしょうか?

多くの会社ではAさんは達成率75%となり、Bさんより低い評価をされてしまいます。このような仕組みのもとではAさんは二度と高い目標に挑戦しなくなるでしょう。

人事評価が目的

組織において共通の目的に近づくために目標管理をすることが本来の目的のはずです。しかし、実際には多くの会社で人事評価のツールとして運用され、評価結果は賞与などの報酬決定に採用されます。

極端な話にはなりますが、組織全体の成果が下がり続けていると誰をどう評価しても報酬は下がっていきます。人事評価は大事ですが、誰をどのように評価するかよりも、メンバーが意欲的に目標達成を目指し、組織が業績をあげて、目的に近づくことが大切です。

では、共通の目的を目指す組織に変わるためには何をしたら良いのでしょうか?

メンバーの意識改革が大切だ、と思われる方も多いかと思います。たしかに意識が変わることで大きな変化が生まれるかもしれませんが、人の意識を変えることは容易ではありません。

組織においては他人の意識を変えることから始めるのではなく、仕組みを変えることから始めましょう。多くの人が関わる組織においては、人の善意や意識に頼っていると成長や再現性は期待できません。意識変革自体を否定はしませんが、仕組みに目を向けることでより効果的、効率的になることが多いです。

ここまでのおさらいしましょう。

一人では達成できないような共通の目的を複数で協力して達成を目指すために組織はあります。組織が達成を目指す共通の目的に向かう力「組織力」は、個人の力の単純合計と相乗効果で表されます。
そして組織力を高め共通の目的に向かう組織を目指すためには、意識ではなく仕組みを変えることが大切です。しかしながら、現状の目標管理という仕組みはうまく機能していません。

そこで注目を集めているのが、OKRという仕組みです。

 

第4章 OKRで組織力が高まる

OKRは、「目的(O:Objectives)」と、「重要な結果指標(KR:Key Results)」の2つの要素で構成されます。1つの「目的(O)」に対して、2~5個の「重要な結果指標(KR)」を持ちます。

「O(目的)」は、「何を達成したいのか?」「どこに向かおうとしているのか?」を示す定性的な目的です。一方、「重要な結果指標(KR)」は「どのように目的を達成するのか?」「目的に近づいていることをどう把握するのか?」を示す定量的な指標です。

繰り返しになりますが、組織には共通の目的があります。ビジョン、経営理念で表される共通の目的は、長期的な将来像を表すものになります。
長期的な共通の目的は大切ですが、もう少し手前に引き寄せた3ヶ月程度の期間での目的も大切です。この近くの目的を定性的なメッセージとして表現したものが「O(目的)」になります。

「O(目的)」には重要なポイントが3つあります。

挑戦的である

現状の延長線上では難しいと思われるような挑戦的な高い場所を目指すからこそ、高い成長を目指せます。そのため、「目的」は挑戦的、野心的な水準でなければいけません。

魅力的である

「目的」は、わくわくするような魅力的なメッセージ性がなければいけません。魅力的だからこそ、メンバーが目的達成に向けてわくわくして奮い立ち、全力で向かうことになります。

一貫性がある

組織全員のベクトルを合わせ協力するために、組織全体、部門チーム、個人それぞれの「目的」は一貫性、整合性が必要になります。

(さらに詳しく学びたい方はコチラをお読みください)

OKRの設定:魅力的な「O:目的」に必要な3つのポイント

「重要な結果指標」を選ぶことは、目的を達成するために非常に重要なことです。OKRで「重要な結果指標」を決める際にも、外してはいけない大切なポイントがあります。

目的への結びつき

「重要な結果指標」は「目的」達成につながるものでなければなりません。市場環境の変化に対応せず、従来と同じ指標を追い続けているといったことがよく見受けられます。現在の「目的」と結びついているかを確認し「重要な結果指標」を選びましょう。

計測可能

「重要な結果指標」は、組織内の誰あっても認識がずれない明確で具体的な判断基準であることが求められます。主観的、感覚的な基準では人により認識の違いが生じるため、事実ベースで計測できる指標であることが不可欠です。

容易ではないが、達成可能

「目的」が満たすべき条件に、「挑戦的であること」がありました。「重要な結果指標」この達成度合いを測るものなので、高い数値目標である必要があります。達成率100%を合格とすると目標が保守的になりますので、達成率がおおむね60~70%程度の水準を目指すと良いでしょう。

重要なものに集中

指標が多すぎると、具体的な内容であったとしても忘れられてしまういます。メンバーの力を集中させなければ高い「目的」は達成できません。「重要な結果指標」は3個程度(多くても5個まで)に絞り込みましょう。

ここまで見てきたようにOKRは非常にシンプルな構造にも関わらず、なぜうまくいくのでしょうか?

「共通の目的」に向かうようベクトルが揃う

メンバーのベクトルを揃えることが、強い組織作りには欠かせません。OKRは、数値で示される「重要な結果指標」だけでなく、組織が目指す方向性、「目的」を示すObjectivesが設定されること、そして、そのObjectivesが全社、部門、チーム、個人でつながりともって設計されることから、設定段階ですでにベクトル合わせが徹底されています。
また、運用を高頻度で行うことで、運用時もベクトルを合わせ続けることができます。

目的・目標・進捗が共有される

透明性を高めることで組織内の無用な不安や不信は解消され、信頼関係が生まれていきます。
OKRの運用では透明性を実現するような仕掛けが含まれています。各階層(全社、部門、チーム、個人)の「目的」と「重要な結果指標」、そしてその進捗状況のすべてが、常に、全社員に対して公開されるため、信頼関係ができ協力が生まれます。

外部環境の変化にすばやく対応できる

OKRは、3か月ごとに「目的」を設定し直し、週1回の1on1など、高頻度でのフィードバックを実行します。個人個人の学習スピードが加速し、組織のスピードが上がるため、外部環境の変化スピードに対応できる組織になります。組織のスピードが加速すると、失敗や想定外の事態が起こってもすぐに修正できるようになるため、新しい取り組みにもチャレンジしやすくなります。

重要なことに集中できる

目的達成のために、指標を設定することは非常に有効なのですが、指標が多すぎるとまったく機能しなくなります。戦略とは捨てること、何をやらないかを決めることと言われることもあります。OKRは、一つの「目的」3~5この「重要な結果指標」に絞り込むことで、重要なことに集中すべきる組織になることができます。

高い目標に挑戦できる

将来の理想に基づき、斬新で実現は容易ではない課題に挑戦することを「ムーンショット」と呼び、現状の延長線上にない成長、革新を生むために不可欠です。OKRでは、挑戦的で魅力的な「目的」を設定することが求められます。これはまさに、ムーンショットを目指す、高い目標に挑戦できるということです。

MBO(Management by Objectives)は現在の日本企業の多くで、人事評価、査定のツールとして使われていることが一般的です。目標管理の仕組みとして広く使われているMBOの実態と、OKRの違いを見てみましょう。

目標管理の目的

MBOを使用する主目的は人事評価、査定になっていることが一般的です。一方、OKRの主目的は組織の成長であり、組織の高い目的を達成することです。そのため、OKRでは、達成度と人事評価、査定とは切り離すことが求められます。

目標の設定頻度

MBOの設定頻度は、1年に一回が一般的です。年度の開始時期に目標を定め、年度末に評価をして、翌期の設定を行うというサイクルです。一方、OKRは通常3か月に1回のサイクルで設定を行います。

進捗管理の頻度

MBOでは、上期、下期にそれぞれ1~2回程度、上司から部下にフィードバックが行われます。す。これに対してOKRは、週に1回など高頻度のフィードバックが求められます。1on1やチームで振り返りを毎週行います。

目標と進捗の公開範囲

MBOの主目的は人事評価であるため、上司と部下の間でのみ公開されています。周りの人、他のチーム、会社全体の目標や進捗状況が分からないため、部分最適に陥る危険性があります。 一方OKRでは、設定段階も運用段階も全社、全員に情報が公開され、組織に透明性をもたらします。

目標達成の基準
MBOでは、当初の目標を上回るかどうか、つまり100%が評価の分かれ目になります。OKRは、非常に挑戦的な目標を立てることが求められます。そのため、実際の運用では、60~70%に達していれば合格、という判断をするのが一般的です。

 

第5章 OKRの始め方

 

覚悟する

OKRを始めるには、リーダーが抱えている課題、今後向かう未来にとってOKRが不可欠だと言えなければいけません。そして、リーダーがOKR導入を決断し、覚悟しなければなりません。
なぜなら導入時には戸惑いや反発が起こることもありますが、リーダーにはやり切る覚悟が必要です。また必ずしもすぐに効果が出るわけではありませんので、簡単にあきらめず、ブラッシュアップし続ける覚悟も求められます。

ミション、ビジョン、バリューを浸透させ、戦略に落とし込む


組織の「共通の目的」を語るときによく使われるのが、MVVと略される、ミッション(MISSION)、ビジョン(VISION)、バリュー(VALUE)です。OKRを始める前に、リーダーはMVVを明確にしなければいけません。

ミッション

ミッションとは組織が果たすべき「使命、任務、役割」のことです。組織外の誰からも必要と感じられなければ、組織は存在することができないからです。そのため、ミッションは組織の「存在意義」とも言われます。

ビジョン

ビジョンは「夢、未来像、将来像」であり、長期的な目的、組織が目指す将来の理想の姿を意味するものになります。組織が長期的にどこを指すのかを示すものがビジョンになります。

バリュー

バリューは、「価値、評価、価値基準、価値観」などと日本語で訳されるものです。組織として大切にすべき価値観であり、行動指針として、ミッション、ビジョンを目指す上でメンバー持つべきものです。

戦略:ミッション、ビジョン、バリューを実現する

経営戦略とは、組織の目的をどのように達成するのかという手段を示したものです。つまり、「ミッション」「ビジョン」「バリュー」の下位概念として戦略は位置づけられます。
経営資源には限りがあるため、実行できる戦略も限られます。「やった方が良い」ことはたくさんありますが、「やらなければならない」ことを明確にして決断することこそが戦略です。

事業コンセプトを整理する

自分たちの事業が、どこの市場にいる誰にどんな価値を提供しているのか、つまり事業コンセプトを理解することが欠かせません。コンセプトというのは「概念、構想」という意味で、事業の概念、構想の中核をなすものが「事業コンセプト」です。

「目的(O)」を設定する


「目的(O)」の設定が難しいと感じたときのヒントをお伝えします。

・これまでのストーリーを全員で振り返る

組織が辿ってきた経緯、組織の現状、市場の展望などに根差した一連のストーリーを全員で振り返ってみましょう。これまでの道のりを振り返ることで、今後の目的地が見えてきます。。

・ミッションを身近な言葉に置き換える

目の前の利益、業績はとても大切ですが、組織の使命、目的に意義を感じることができれば、メンバーが全力で協力しあって目標の達成に向かっていきます。組織全体のミッションを身近に感じられる言葉に置き換えてみることで、チームの「目的」を考えるヒントが得られます。

・何が実現されたら最高のほめ言葉をもらえるかを考えてみる

「すばらしい! 期待以上だ!」と顧客が大喜びしたときに行ってもらえる最高のほめ言葉をリアルに想像してみてください。そのときにいったい何が実現されているか、チームで考えてみてください。うまくいけば、「目的」が設定できるだけでなく、チームに前向きな姿勢も醸成されます。

・「○○するぞ! 大作戦」など、作戦名を考える

創造性を高めようとしたとき、ユーモアや遊び感覚が大きな力になります。そこで、「○○するぞ! 大作戦」などの言葉をもとに目的を考えてみることで発想の幅が広がります。

「重要な結果指標(KR)」を設定する

「重要な結果指標(KR)」を設定するときのポイントを解説します。

・指標達成の手段、現在の計測有無を前提に設定しない

「重要な結果指標」は、本当に「目的」につながる指標は何か?という視点を最初に検討してください。どうやったら指標が達成できるか?つまり手段は、指標を決めてから考えるものです。また、現在計測できている指標から選ぶと、現在の延長線上の指標しか選べないので、注意しましょう。

・「結果指標」を中心に設定する

「行動指標」とは、「営業メール100通」「毎週5本ブログをアップ」など、どれだけ行動をしたかを表す指標のことです。これに対し「結果指標」とは、売上1億円、100万ページビューなど、行動をした結果を測る指標です。
「重要な結果指標」は、結果指標を中心にしてください。なぜなら、最終的な結果に基づくものであり、KRに行動指標を設定しても、目的に到達したか判断がつかないからです。

・現状と期限を明確にする

「重要な結果指標」の水準を決めるには、まず現在値を明確にすることが必要です。目標値と現在地にどの程度の差があるかを把握することで、日々の活動につながります。同時に、いつまでに達成するか、つまり、期限を決めておくことも必要です。

・指標の計算方法を明確にする

「重要な結果指標」のの計算方法を明確にしておく必要があります。
たとえば、新規顧客数を指標とした場合、無料サービスの利用者は含めるのかどうか、何年も利用がなかったとしても既存顧客とみなすのか、など細かく考えておく必要があります。

・目的達成へ影響の大きさと範囲で絞り込む

ここまでくれば、3~5個に「重要な結果指標」は絞り込みます。
絞り込むときには、まず目的達成に対する「影響の大きさ」です。もう一つは「影響の範囲」です。たとえば、ある店舗の売上にもっとも影響するのが「新規顧客数」だったとします。しかしながら、その店舗の新規顧客数は、テレビCMの有無でほぼ決まるとすると、店舗の「重要な結果指標」に「新規顧客数」を含めても意味がありません。「影響の範囲」が大きいものを選ぶようにしましょう。

 

第6章 OKRの運用

OKRの設定ができれば、いよいよ運用です。
運用はただ進捗管理するのではなく、高頻度でメンバーを「巻き込み」ながら、しっかり「振り返り」をすることが大切です。

チームでの運用

・チェックイン

週の初めに今週何をすべきかの予定を確認し、チームがOKRに向かうエンジンをかけるミーティングが「チェックイン」です。内容はできるだけシンプル、短時間で終わることを心掛けてください。ポイントは現在の状況を把握するだけでなく、次に向かうためのタスクを組めているか?障害はないか?を確認することです。

(確認すべき内容)
■OKRの進捗状況と今後の見込み
■週のタスクの確認
■実務上の障壁の洗い出し

週の始まりなので、今週もがんばっていきたいと思える状況を作り出すことがリーダーの役割です。ポジティブな言葉で会議を絞めるようにしてください。

・ウィンセッション

週の終わりに勝利を祝う会が「ウィンセッション」です。ここで大切なことは、結果に関わらず、各メンバーが高い目標に挑んだことを承認、賞賛することです。
OKRでは挑戦的なチャレンジをしているのですから、達成率は低くなりがちです。達成率が低い場合「できなかった」ことに着目してしまいがちですが、そうなるとどうしても否定や叱責が多くなります。
そうならないためにも、まずは「できた」ことに着目し、承認・賞賛することが大切です。そのうえで、さらに「できた」ことを増やすためにはどのようにすればよいかを考えていける雰囲気づくりがリーダーには求められます。

上司部下間の運用

・1on1ミーティング

上司と部下の間で、高頻度かつ定期的(週1~月1回)に部下の成長のために話し合う時間が「1on1ミーティング」です。部下が自分で内省した上でフィードバックを受けることが重要ですので、ミーティングの前に部下は内省内容をアジェンダとして報告しておくことが大切です。

リーダーはメンバーの報告の分からなかった点を確認して、チームミーティング同様にできた点を承認・賞賛していきましょう。ただし、承認・賞賛だけでは個人の成長は図れません。
メンバー自身が「できていない」ことを正しく把握できているかを確認し指摘しましょう。

四半期ごとの振り返りと再設定


通常、OKRは3か月間の運用を経て振り返りと再設定を行います。
大切なポイントは振り返りと再設定にメンバーを巻き込むことです。

・KPTを使ってチーム全員で振り返り

チーム全員で振り返る方法として、「KPT」がおすすめです。これは、Keep、Problem、Tryの頭文字を取ったものです。

Keep:続けたいこと、良かったこと
Problem:問題点、やめたいこと
Try:新たに取り組みたいこと、挑戦したいこと

これら3点のうちK、Pの2点をチームメンバー全員がまず各自で考えて、付箋に記入します。付箋に書くことで他人の意見を気にせず率直な意見を言い合えるようになります。そして、各自の付箋を全員で共有します。

KとPを共有できたら、続いてTも各自で考え、付箋に書きます。その後、KやPと同じやり方で共有します。そして最後に、実際に実行するTを選びます。

次に実行したいことが、OKRの土台となる次期の戦略のヒントとなります。

・ERRCグリッドで次期の戦略を整理

振り返りが終われば次期の戦略立案です。「目的」を定めたうえで、何をやり、何をやらないかを明確にします。「目的」を見直したうえで戦略を立案しますが、前期と何が違うのか分からないというとがよくあります。そのような事態を防ぐのに役立つのが、ERRCグリッドです。

そこで、前期の戦略と次期の戦略を比べて、Eliminate(取り除く)、Reduce(減らす)、Raise(増やす)、Create(付け加える)という観点から検証してみるのです。本当に重要なことに絞り込まれた戦略を練ることができる上に、メンバーの戦略理解にもつながります。

OKRの運用は自社に合わせて磨き上げる

OKRで大切なことは「わくわく」を全員で追いかけることであり、そのためにメンバーを「巻き込み」、「振り返り」を高速で行うことです。この3つのポイントを自社の実情に合わせて、カスタマイズしていくことで、OKRは磨き上げることが大切です。

OKRは組織を強くするコミュニケーションツール

多くのメンバーが協力し、調整することで、組織力は高まります。そのためには、組織内でのコミュニケーションが成立していなければなりません。

そのためにOKRを共通言語として活用しましょう。OKRはシンプルで理解しやすい構造と定義であるため活用しやすいです。

「OKRの達成状況はどう?」
「今回のプランは今期のOKRとどういう関係?」
「『重要な結果指標』の達成率を上げるための次の行動は〇〇です!」

OKRは、組織内のコミュニケーションを活性化させ、リーダーがリーダーシップを発揮しながらうまくマネジメントしていくためのコミュニケーションツールとして活用しましょう。

第7章 OKR導入の実際

最終章となる本章は、実際にOKRを運用しているパーソルプロセス&テクノロジー株式会社プロダクトマネジャーの浅沼氏にお話しをお伺いしました。実際に導入から運用まで行っているからこそ分かる生の声をピックアップします。

今までは、トップダウンで上から情報が降りてくるような形が多かったのですが、OKR始めることによって、ボトムアップ型になり、社員からの提案が多くなってきたと実感しています。

 

目的の設定には、ディスカッションを重ねるのが非常に重要だと思っています。私自身もまずは何個か案を出しますが、メンバーに挙げてもらったものの中に挑戦的なのが多かったりします。

 

OKRというフレームワークの根底にあるマインドセットみたいなところが非常に重要だなと思っています。

 

OKRのメリットは社員同士のコラボレーションを創出したり、組織内のコミュニケーションの促進にあります。そういったところの楽しさ、働くうえで大事にしたいことなどを意識しながらOKRを導入してほしいなと思っています。

おわりに

本書のはじめに紹介した宮崎駿監督の言葉を借りればOKRは「理想を持ちながら現実を動かす」仕組みであり、それこそが組織づくりの神髄とも言えます。

本書を読んで興味を持っていただけたなら、ぜひ小さくてもよいので、OKRのエッセンスを取り入れて実行していただきたい。

「わかる」と「できる」は違う。だから、読み進めていく中で、何かが少しでも組織づくりに「希望」を見出せたとしたら、それを「現実」に実行いただくことで「できる」状態に変わっていただくことを切に願います。

少しでも皆様の組織づくりのお役に立つことができれば、この上ない幸せです。

本気でゴールを達成したい人とチームのための OKR

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動画で分かる「本気でゴールを達成した人とチームのためのOKR」

ディスカヴァー・トゥエンティワン公式Youtubeチャンネルにて、本書の解説動画が掲載されています。ポイントが凝縮された分かりやすい動画になっていますので、こちらもぜひご覧ください。

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