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【書評】『情熱・熱意・執念の経営』永森重信

2020.04.17

書評

タイトルどおり、情熱に満ちあふれた本です。
これは、精密小型モーター製造を主とする日本電産株式会社の創業者であり、同社を、M&A戦略を展開して国内外の企業を買収・グループ化し、全世界での圧倒的シェアを誇る総合モーターメーカーに育て上げた永森重信氏の手によるもの。自伝的な話から、経営哲学、人材教育、リーダー論、営業・技術・財務についての考え方、果てはM&A・国際化・日本経済に対する提言にまで至るその内容は、永森氏という巨大な人物を知る上で入門的なものといえます。経営者のみならず、ビジネスパーソンならば、氏の含蓄に富むひとつひとつの言葉にうならざるをえないでしょう。

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永森氏は「苦労こそ財産」という自説を述べます。理由としては「苦労には有形、無形の利子がついてくるからで、完成した製品や身につけた技術力が有形の利子です。それよりも大きな利子は、情熱、熱意、執念さえあれば不可能を可能にできるという無形の自信をつけたことでした」とのことです。

この考え方をベースにして永森氏は、決して豊かとはいえなかった少年時代、事業を始めたものの人やモノや資金の不足に苦しんだ青年時代を経て、日本電産を世界No.1のモーターメーカーに押し上げるまでになったのです。

そして本書の白眉は、なんといっても永森氏独自の人材採用術と育成術の部分でしょう。

「個人の能力の差というのはせいぜい五倍ぐらいですが、意識の差は百倍になるというのが、わが社の採用と教育のベースとなっています」とし、能力があってもやる気や意識の低い人物より、多少能力が劣っていても、やる気や意識の高い人物を採用したほうが戦力になる、という考えを基にして様々な採用試験を実施しました。

声の大きな人から順に採用する「大声試験」、用意した弁当を食べてもらい、早く食べ終わった順に採用する「早飯試験」など、学科試験ナシを貫き、学校での成績も完全に度外視。規格外の採用試験は当時、世間からかなりの顰蹙を買いましたが、日本電産の幹部社員として最も大活躍しているのは、このような試験で採用した人たちだそうです。

永森氏は「ウサギとカメ」の話を引き合いに出して、社員教育の基本は知識を詰め込むことでも、技術を教えることでもなく「怠けるカメ」を「怠けないカメ」にすることだという考えに依って立ち、いかに普通の人を優秀な人材に育てるか? をテーマに、社員の魂に火を点ける策を打ち出しています。

前向きな取り組みや行動については、結果の如何を問わずプラス評価を行う「加点主義を貫く」、女性にも男性と対等に活躍できる環境を整える「チャンスは平等に」、頑張った社員の報酬は多く、怠けた社員は少ないシステムの「競争原理」などです。

永森氏が、ある年に掲げたスローガンは「登用される社員の七条件」でした。
「健康管理のできる社員」
「仕事に関する情熱・熱意・執念を持ち続ける社員」
「いかなるときもコスト意識を持てる社員」
「仕事に対する強い責任感を持てる社員」
「言われる前にできる社員」
「きついツメのできる社員」
「すぐ行動に移せる社員」

このような理想・目標を追求していくうちに、永森氏は、昨今の学校教育に対して危機感を抱くようになります。教育によってもたらされる若者の競争心や闘争心の欠如、創造力や想像力の低下、夢や目標の足りなさ、表現力の貧しさなど…。

本書の刊行は2005年ですが、現在に至るまで永森氏の意見はぶれていません。日本電産の地元にある京都先端科学大学の理事長に就任して、大学改革に乗り出した彼は、2019年春の入学式で新入生を前に、こう挨拶しました。

「今の大学は、社会にとって『役立たずの人間』ばかり出している。こういう強い怒りに近いものを私は持っておりました。世の中が偏差値とかブランドというものを利用している時代は、すでに終わってきています。実力社会になってきているわけです」
「卒業しても英語がしゃべれない。経済学部を出て企業の経理に回されても、決算書すら作れない。今まで大学はそんな人材を世の中にどんどん出している」
「偏差値と、仕事ができるかどうかとは、まったく関係ないのですよ。偏差値、ブランド主義。こんなもん、クソくらえですわ」

本書の刊行当時、永森氏率いる日本電産のグループ会社は約100社でしたが、15年が経過した今や、300社を越える連結企業集団に成長。連結売上高は役4800億円でしたが、文中で永守氏が目標としていた1兆円の達成は現実のものとなりました。驚くべき高レベルの有言実行ぶりです。これも、本書のタイトル通り、元日の午前中を除いて、1年365日、睡眠と食事と入浴時間以外は休みなく情熱をもって経営をする永守氏、そしてトップの彼とともに、これまた徹底的に仕事にこだわる、高度に教育された社員たちの力の賜物であることは間違いありません。読者は永守氏の膨大なエネルギーを強烈に感じることができるでしょう。

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