OKRは、組織のビジョンに基づき、向こう3か月に何を達成したいのか?を定め、組織と個人のベクトルを合わせるためのツールであると言えます。言い換えれば、OKRによって、ビジョンに向かう長期的な戦略を3か月単位に落とし込んだ短期的な戦略を組織全体に展開し、意欲的に実行することを目指します。そのため、大元にある戦略自体が悪いものであれば、OKRがいくら良いツールでも機能しません。
今回は名著「良い戦略、悪い戦略」に基づき、戦略について、詳しく考えていきましょう。
「悪い戦略、悪いOKR」チェックリスト
OKRの設定が難しいと言われますが、難しさの要因の一つに「戦略」があります。良い戦略でありかつ明確に理解されていれば、OKRの設定は表現が中心の問題になります。
・OKRを設定が難しい
・OKRを設定したが腹落ちしない
・設定したOKRが実行できない
と感じたときには、「良い戦略、悪い戦略」で示された「悪い戦略」の4つの特徴に基づきチェックしてください。
□空疎である
□重大な問題に取り組まない
□目標を戦略ととりちがえている
□まちがった戦略目標を掲げている
空疎である
ビジョンやObjectivesは、挑戦的かつ魅力的であることが望ましいです。一方で、魅力的な表現にとらわれ、中身の伴わない状態では空疎であると言わざるを得ません。
威勢の良い言葉や耳障りの良い言葉は、戦略の粗を隠してしまう恐れがあります。
まず「誰に」「どんな価値」を提供し、「何を達成したい」のか、が明確になっているかを、確認しましょう。3か月などの短期スパンの前に、長期的な目線でこの問いに答えられるか、が最初の関門です。
そのうえで、Objectivesを考える際のポイントが、まずは表現にこだわらず、中身にこだわることです。「Objectivesはワクワクする表現」を意識しすぎると中身が疎かになってしまいます。
まずは中身のコンセンサスを組織内でとり、その上で表現を磨くようにすることが大切です。
重大な問題に取り組まない
ビジョンを目指す上で、本当に重要な問題は何なんでしょうか?
・本当に重要な問題を正しく認識できていない
・問題の重要性が低いと誤って認識している
・問題が一時的であると誤って認識している
・手がつけやすい問題にばかり取り組む
・手がつけにいく問題を放置する
このような懸念がないか、OKR設定段階で洗い出してみましょう。洗い出す際はできるだけ多様なメンバーがまずは個々人で意見を出し、そのうえで心理的安全性の高い状態を対話することが欠かせません。
目標と戦略を取り違えている
OKRではムーンショット発想での目標設定が重要ではあるが、ただ高い目標を掲げることは戦略ではない。何らかのオポチュニティーやアイデアがあり、何とかすればムーンショットに手が届くような手段が見えている状態が正しい状態です。
ただただ、夢物語的に高い目標に挑戦しつづけることは無謀であり、戦略ではありません。
とはいえ、目の前に見えているだけの手段で達成できるのであれば、ムーンショットではないのが、厄介なところです。成功に対して自信度が50%程度の上手くいけば何とか手が届くかもしれない手段が見えていることが大切です。
まちがった戦略目標を掲げている
OKRに当てはめると、間違ったKRを掲げているになるのではないでしょうか。
・設定したKRが達成されたとき、本当にOは達成されますか?
・Oの達成のために優先度の高いKRは選ばれていますか?
・KRは単なるタスクリストになっていませんか?
一度設定したOKRを見て、3か月後に全くされていない状況を思い描いてください。その要因を考えてみると、KRが間違っていないか、を炙り出すことができます。
最後に
ここまでのチェックリストを確認すれば、悪い戦略、悪いOKRを見つけ出きるはずです。そのうえで、最後にこの本から戦略における最重要ポイントをご紹介します。
戦略の要諦はフォーカスにあるが、多くの大企業はリソースをフォーカスできないからだ。彼らはいくつもの目標を同時に追いかけるので、結局はどれも達成できない。
OKRの重要ポイントでもあるフォーカスは、戦略でも重要です。「何をやるか」を決めるには「何をやらないか」をきっちり決めて、戦略、OKRに反映してください。