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【対談セミナーレポート】越川慎司×奥田和広「求められる現代のリーダー像とは?」

チームの「士気を上げたい」「成果を出したい」世のリーダーはそう思いつつも、メンバーと中々かみ合わないという現実。人と組織が成長に集中するために今、必要なこととは何なのか?

8月に新刊『AI分析でわかった トップ5%リーダーの習慣』を発売の越川慎司氏と、『本気でゴールを達成したい人とチームのためのOKR』の著者である当社代表取締役 奥田和広による対談から、事前および当日に参加者からいただいたテーマを抜粋して紹介します。

 

①メンバーの中からリーダー候補をどう選べば良いですか?

奥田

奥田

色々な方法がありますが、いきなり大抜擢ではなく小さなプロジェクトや取り組みからでよいので、リーダーをやってもらうことが良いかと思います。実際にやってもらうと成功も失敗も経験しますが、その中で本当にこの人で良いのか?どこをサポートすれば良いのか?を見極めてもらうと良いですね。

越川様

越川様

企業のコンサルティングをする中で、管理職の登用は重要なファクターになってきています。嬉しいのは、評価制度と管理職の登用方法を多くの企業が変えようとしています。どう変えようとしているかと言うと、昔はプレーヤーとしての成果を出せば評価され管理職に登用される、そのためにプレーヤーとしての強みが消えちゃった、なんてことが結構多いです。だからプレーイングマネジャーが日本と韓国は割合が多いんですね。

僕は登用すべきは、偶然の出会いを必然にする、コミュニケーション能力の高い人ですね。業務遂行能力の高い人はプレーヤーで良いので、コミュニケーション能力の高い人を選んでいくことをオススメします。

奥田

奥田

そうですね。コミュニケーション能力、対話力はますます重要になってきます。チームのゴールや環境が変わり続ける中で、正解を持っていて下にそのままやれ!が通じる時代ではもうないですよね。

越川様

越川様

大賛成ですね。僕が社会人になりたての頃は「言われたことだけやれ」だったんです、その方が売上が上がるからです。
今、みなさんが苦労されているのは、「言われたことだけやれ」ではなく「自分で考えて」になってることですよね。昔は正解があって、上司には教える、ティーチング能力が求められました。今はコーチングが求められるので、上司になる人も違ってくるかと思います。
トップ5%を調べても意外と口下手な人が多いんです。聞き上手で口下手な人が成果を出し続けているので、本当に昔の人と変わってきてますね。

奥田

奥田

もう一つの変化として多様性がありますね。
働き方改革が進む中で、昔であれば新卒一括採用、終身雇用も崩れています。多様な人材、働き方が進む中で、多様化を避けること自体が無理なわけです。多様性を活かせない企業は生き残れないわけですから、多様な人の意見を聞き活かす対話能力は欠かせないですね。
対話能力の高いリーダーの特徴は何かありますか?

越川様

越川様

対話能力の高いリーダーを当社では調べたんですが、5%リーダーは話すときに口角が2cm上がっているんですよ。口角が上がっていることで怒っていないことが伝わり話しやすくなります。心理的安全性にもつながりますよね。
そして、オンラインではあいづち、うなずきが大切です。トップ5%リーダーは3.5~4cm深くうなずいているんです。実際に管理職にうなずきを深くしてもらうことをマネさせると、会議時間が8%減ったんですよ。

奥田

奥田

越川さんの著書の中でも意識改革ではなく行動が大切と書かれていましたが、うなずく行動を実際に変えることがそれだけの効果を生むんですね。

②指示待ちタイプの管理職をリーダーに変えるには?

越川様

越川様

過去を管理するのが、マネージャーですね。週報を作ることがメインの仕事になってしまうんですね。
未来に導くリーダーは、成果を出し続けるという山の頂上があります。そのために組織をどう運営するか?重要度と緊急度で仕事を変えるか?を考えるのがリーダーですね。過去と未来、これで視座が異なるわけです。
管理職の行動目標をKPIで管理しようとすると、手段と目的が混同しがちなんです。その点、OKRは確実に目的に根差しているので、管理職の成果をOKRで見ることは組織としては健全かと思います。

奥田

奥田

私がOKRに可能性を感じた点の一つがまさにその点です。
私は経営者を経験した後に中間管理職になったわけですが、周りの管理職を見ると非常に優秀で勤勉なんです。ただ、上から与えられた目標に必死に取り組むのですが、目的は何なのか?を考えたり、目的を変えたりしてはいけない、と思い込んでいるんです。その姿勢が指示待ちとなって表れているんです。
ただ、指示待ちになってしまう要因は、実は上が指示しすぎなんですよね。部下が意見を言ってきても、「こうやれ」と言いすぎてしまうんです。そうすると、部下は言われた通りやった方が楽だとなってしまうんです。これがいつの間にか刷り込まれて、さらにその人の部下にも同じことをしてしまってますよね。

 

越川様

越川様

評価制度が失敗した人を減点評価するようになっていることが多いですよね。僕はこれはあり得ないと思っていて、挑戦しない人をマイナス評価にすべきだと思います。
失敗を繰り返した後に成功があるので、行動量を増やさないといけないんですね。成功、失敗の二択ではなく、行動しない、挑戦しない人をマイナス評価する前提があるべきです。その上で、OKRのように山の頂点をめざすしおりがあると良いかと思います。

奥田

奥田

実際、挑戦が大事、イノベーションを起こそうと言っておきながら、失敗したら賞与が下がる、降格するなんて企業も多いですよね。そうなると、挑戦を恐れて誰もチャレンジや新規事業に乗り出さなくなるわけです。

越川様

越川様

上手くいっている企業は成功を目指すのではなく、実験することを目指しているんです。学びを得るために実験が必要です。小さく失敗して将来の大きな成功につなげていくことが良いかと思います。
なので、現場に自由と責任を渡して、実験をたくさんさせて学びを得て未来の成功につなげる視点で評価していただきたいです。

奥田

奥田

実験からの学びを得るためにも、小さな山の設定が大事です。要は失敗しても致命傷を負わないように、小さな山を定めてここまで来たらやめる、方向転換するを事前に決めておきましょう。
小まめな挑戦をして、上手くいったらさらにジャンプする、上手くいかなかったらとめる、方向転換することが実験では大切ですね。

越川様

越川様

働き方改革がうまくいっている企業は、現場に任せて進捗20%程度で小まめに報告させるんですね。任せて進捗を見て、GOかNO GOかを経営陣が決めている意思決定プロセスができているんです。
勇気をもって現場に自由と責任を与え、勇気をもってやめさせることができることが経営トップの役割なんです。

奥田

奥田

そういう意思決定プロセスができる経営トップのもとだと、良いリーダーが育っていきますよね。
今は中間管理職が板挟みになって本当に大変だと思います。中間管理職としても部下から小まめに報告をもらうようにすることがオススメです。
たとえばたたき台を早めに見せてもらうことで修正が早くできます。部下がしっかり作りこんだ資料を見せられると、修正が遅くなるだけではなく、上司としての指示も出しにくくなりますので、時間においても質においてももったいないです。

③メンバーとして、リーダーに変わってもらうには?

奥田

奥田

リーダーであれメンバーであれ、リーダーシップを持つことですね。リーダーシップを簡単に言えば、チームに対する影響力であり、チームの一員であればリーダーであれメンバーであれ、チームのために何をすればよいかを前提として行動することが大切です。
もちろんリーダーが一番影響力があることは間違えないですが、例えば心理的安全性においてもメンバーとしても自分の考えや悩みを積極的に発信したり、リーダー含め周りの人の意見を聞きアドバイスを送れば高まります。
先ほど話に出た対話についても、メンバーの立場においても積極的に行うことで、チームもリーダーも変わっていくはずです。

越川様

越川様

大賛成ですね。本当にそういう時代、共感共創時代に社内でも社外でもなっています。上司は偉くないです、仲間です。
そして、成功体験があるのでリーダーの意識は変わらないです。だから行動を変えることがおすすめです。リーダーの行動を変える2つの要素があります。
まず、一つ目は「変化を数字で示すこと」です。たとえば会議を60分ではなく45分に変えたら全員満足でしたので、うちのチームの会議も変えませんか?と数字で示すと良いですよね。
もう一つが「自分もやったんだから、あなたもやってくださいよ」という返報性の原理ですね。テレワークなどでも自分がやってみたことで変化を提案する資格を持つわけです。
変化を提案する資格と数値で示す、この2つで動きやすくなるんではないかと思います。

奥田

奥田

「やってみる」本当に大切ですよね。
私がOKRを導入コンサルティングするときも、実際に導入推進するチームがあっているかどうか分からない中でもやってみていると本当に強いです。
その中で失敗や苦労をしていても、こういうところが良いからぜひ取り入れたい、と説得力をもって社内の皆さんに行っていただけるんです。

それと共感共創という意味では、透明性も大事ですよね。透明性がないと不信、不安になり、うちの部署は頑張っているのに、隣の部門は何やっているんだ!みたいなことになりがちですよね。
自分たちの部署はこんなことを頑張っていて、上手くいったこと失敗したことが分かり合えるとお互いに協力や共創できるようになりますよね。

越川様

越川様

特にテレワークで目の前にメンバーいないですから情報の透明性はますます大事になっています。ただ一方で働き方の見える化は、まさにマイクロマネジメントになって危険です。見える化ではなく、OKRのチェックインのように自分から見せる化ことが大事だと思うんですね。チームで進捗と行動目標を見せる化することで、上手くいっていない人をメンバーやリーダーが助けたりできるようになります。
そういった中で、上手くいったことも失敗したことも腹を割って話せる文化にしていかないといけないですね。そうすると失敗をマイナス評価すると、失敗を話せなくなるので評価制度は大切ですね。
そのためにトップ5%のリーダーは失敗を話せる心理的安全性のために、弱みを見せることをしていますね。

奥田

奥田

リーダーが弱みを見せることができるので、メンバーも弱みを見せることができるようになりますよね。そのような関係性であれば厳しい議論をしても、お互い仲間なんだから必要な議論なんだと思えるわけです。そうでなければ上からの押し付け、パワハラなんてことにもなりかねないですよね。

越川様

越川様

トップ5%のリーダーの会議を観察すると、冒頭2分雑談してるんですよね。リーダーがお昼のランチ失敗したなど、どうでも良いような話をして部下にも聞きながら話すんですよね。弱みを見せられるって強いんですよね。

奥田

奥田

なるほど。OKRではウィンセッションと言って、どんなことでも良いのでその週にあった良かったこと、嬉しかったことを共有しあう会をするんです。
そうするとお互いに承認、称賛するし、雑談に脱線することもあります。仕事の悪かったことは一旦置いといて、良かったことを認め合うことをするんです。認め合ってるから、そのあと弱みを出したり厳しい議論ができたり、するようになるんです。
あの手この手で対話の工夫をし、場を作ることが大切です。

参加者からのご質問について

リーダーに求められるフィードバック力で重要な要素は?

奥田

奥田

直接の回答にはならないですが、フィードバックには部下の内省が前提にすることをお伝えしたいです。
部下がしっかり自分で振り返っているときのみ、上司のフィードバックが成り立ちます。最近、「1on1ミーティングがうまくいかないんです」とご相談を受けるのですが、その解決策として上司のコーチング力、フィードバック力を高めたいとのご要望をいただきます。
もちろん、これらの力が高まることは良いことなのですが、部下の内省のないままフィードバックをするのは健全ではありません。部下がしっかり内省した状態で上司がフィードバックすることが何より大切です。

越川様

越川様

私からは2点お伝えしたいです。
まず1つ目は「質問ではなく発問」をした方が良いと思います。質問は答えを一緒に導く行為ですが、発問は答えは分かっていても相手に内省を促すことです。それなぜだと思う?と発問を繰り返すと相手が考えるようになります。
もう1つは、厳しいことも伝えないといけない時もありますが、指摘事項、改善点を伝えるときは「先に褒める」ようにすることです。先に褒めるようにすると相手が受け入れる可能性が、3倍に高まります。

奥田

奥田

私も同様のことをおすすめしてますね。
今は野球はボールを先に言うようになりましたが、2ストライク1ボールの順で話すようにと指導しています。

信頼を高めるリーダーの行動はどのようなものがありますか?

越川様

越川様

先ほどから出ている1on1ミーティングを導入する企業が増えていますが、部下の行動目標と進捗を確認することです。部下にやれ!ではやらないです。部下と行動目標も一緒に考え、一緒にやることが、が信頼につながります。メンバーも自分もやる、その上で結果が出たら共感することで、信頼関係が高まります。

奥田

奥田

今の点はすごく大切ですね。
その上で、リーダーの言葉と行動が一致していることが大事です。部下には厳しいことを求めているのに、リーダーは自分に甘いと信頼関係は築けません。
とは言え、リーダーも人間なので、時にはミスをしたり良くない行動をしてしまうこともあると思います。その時は素直に認め、誤ることが欠かせないです。自分はリーダーだからいいんだ、のような振る舞いは避けなければいけません。

年上の部下へどのような対応したら良いですか?

越川様

越川様

年上の部下をもった経験が多いのですが、結論から言えば異質を受け入れていかなければならないので、年上年下でフィルターをかけて過剰な気遣いのないようにしないといけないです。一方で話が合わないなど過剰に気遣いをしてしまうこともありますが、過剰な気遣いは生産性を押し下げます。
そこで、オススメは、年齢、性別などに関わらず相手との共通点を見つけることです。雑談の上手い方は、くだらない話をしているのではなく、相手との共通点を探すコミュニケーションをしているんです。
意外と飲食に関することが多いのですが、何か共通点はあります。共通点を見つけることで過剰な気遣いを減るかなと思います。

奥田

奥田

私も年上の部下を持った経験が多いのですが、2点お伝えします。
1つ目は、今あった共通点を見つけることに通じますが、リーダーは自己開示することが大切ですね。自分が開示するから、相手も開示してくれます。まずは自分から自己開示を心がけてみてください。年齢に関わらず多様なメンバーと接するリーダーとして必要だと思います。
もう1つは、誰にでも「さん」づけ、丁寧な言葉を使うことです。かしこまった敬語を使う必要はないですが、一定の丁寧さを仕事上の言葉が大切です。いつ誰が上司や部下になるか、入れ替わるか分かりませんので、年上年下で言葉遣いを変えていると余計な気遣いが生まれます。

最後にメッセージを

奥田

奥田

個の時代と言われますが、チームの力がますます重要だと思っています。自律した個人が協力してチームで成果を上げるヒントが今日のセミナーにあればこの上ない喜びです。
何か一つで結構ですので、明日から行動に移していただければと思います。
今日はありがとうございました。

越川様

越川様

今日のお話の中で意外に良かったことを、明日誰かにお伝えいただければと思います。
そうすることで触発が生まれます。ポジティブな触発を生むことで、行動を変えていく社会になればなと思います。
みなさま、ありがとうございました。

登壇者プロフィール

 

越川慎司氏

株式会社クロスリバー 代表取締役社長

国内通信会社などを経て、2005年にマイクロソフトに入社。業務執行役員としてPowerPointやExcelなどの事業責任者を務める。2017年に株式会社クロスリバーを創業。創業当初から完全リモートワーク、週休3日、複業を継続。延べ800社以上に、ムダな時間を削減し社員の働きがいを上げながら利益を上げていく「稼ぎ方改革」の実行を支援。年間400件以上のオンライン講座を提供。2018年から800名以上がリモートワークの株式会社キャスター執行役員と兼任。
著書は、『AI分析でわかった トップ5%社員の習慣』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『科学的に正しいずるい資料作成術』(かんき出版)、『超・時短術』(日経BP)、『巻込力(経済法令研究会)』など。

 

奥田和広

株式会社タバネル 代表取締役

大阪府大阪市出身。1975年生まれ。一橋大学商学部卒業。ファッション・化粧品メーカー、コンサルティング企業などで勤務。取締役として最大 170 人の組織マネジメントに携わる。OKR、組織マネジメントのコンサルティングを行う株式会社タバネルを設立。
著書は『本気でゴールを達成したい人とチームのためのOKR』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『最新Webマーケティング2021』(マイナビ出版、共著)。

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