社会人向け経営大学院の運営や法人事業をはじめ、多くの事業を展開するグロービス。IT×教育の分野でイノベーションを起こすべく設立したデジタル部門「グロービス・デジタル・プラットフォーム(以下、GDP)」では、OKRを活用したチーム運営を行っています。
今回、GDPのOKRテスト導入にも携わり、現在もOKRを運用している神崎様にお話をお伺いいたしました。(聞き手:当社代表取締役 奥田和広)
プロフィール
株式会社グロービス グロービス・デジタル・プラットフォーム
プロダクトマネージャー 神崎 正明 様
大学卒業後、3つのIT系企業で約8年間、デザイナーとして働く。主に自社サービスの新規立ち上げや改善においてUI/ビジュアルデザインを担当。
その後、デザインをディレクションする立場にポジションを変え、2014年に新規で立ち上げた不動産サービスにおいて制作チームをリード。KPI設計・CVR改善により事業に貢献。
同時期にデザイン組織のマネジメントも兼務し、デザイナーの採用活動およびメンバーの目標設定と評価を担当する。
2018年から旅行予約サービスのアプリネイティブ化プロジェクトにおいて、プロダクトマネージャーとして、ビジネス/開発/マーケティングを担当。同年にグロービスに転職。
現在は「GLOBIS 学び放題」のプロダクトマネージャーとして、プロダクトビジョン実現にむけて日々尽力している。
ボトムアップとトップダウンを組み合わせた目標設定を目指して
奥田
神崎様
グロービスは社会人向けMBAや法人事業など、これまで教育分野でノウハウを培ってきました。GDPは、テクノロジーを活用した教育サービスの開発・提供のさらなる拡充を通じ、グロービスビジョン「経営に関するヒト・カネ・チエの生態系を創り、社会に創造と変革を行う」の実現を目指して、2016年に設立されました。
設立から5年経ち、現在ではエンジニアを中心にビジネス開発、デザイナー、ユーザーサポートなどの幅広い職種からなる約150人の組織となっております。
奥田
ありがとうございます。
GDPでOKRを導入した経緯を教えていただけますか?
神崎様
はい、3年ほど前にOKR導入の検討を始めました。
エンジニアが多い組織なので、ボトムアップとトップダウンを組み合わせた自発的な目標管理が合うのではないか、と考えていました。加えて、ムーンショット発想で挑戦的な目標を目指すことで、やりたいこと、やるべきことを大きく達成する、といった思想も持っていました。そのように考えている中でOKRに出会いました。
奥田
なるほど。自分たちの組織にあった目標管理を探す中で、OKRがあっていそうとなったのですね。
神崎様
はい。そこで、事業リーダークラスとも話し合い、まずは情報収集から始めました。色んなセミナーに参加し、導入事例を収集し、ネット記事のリサーチをするなど、様々な情報のインプットをしましたね。多くの情報を整理したことで、導入の検討が前進しました。
OKRのテスト導入で手ごたえを感じ、全体導入へ
奥田
情報収集、整理のあとは、どのように導入を進めたのですか?
神崎様
いきなりGDP全体に導入するのではなく、テスト導入をすることにしました。当時、GDPは100人程度になっていたのですが、まずは10人未満だった私のチームで小さくスタートしました。
奥田
たしかに大きな組織の場合、テスト導入からスタートしてみるのはオススメですね。
ご自身のチームでテスト導入をして、どのように感じましたか。
神崎様
今から振り返ると問題点もありましたが、一言でいえば、GDP全体で展開すると価値はあると感じました。むしろ、小さなチームで導入するだけでは価値はありますが小さく、全体で導入し部門連係できれば大きな価値を生みそうという手ごたえがありました。
奥田
OKRのメリットの一つは、整合性や一貫性による連携がありますよね。そのほかにテスト導入で感じたことはありますか?
神崎様
はい、今振り返るとObjectivesには問題があったと感じています。Objectivesでは、「わくわく」が重要ですが、わくわくした表現に気を取られすぎていました。まずは「中身、意味」を整理した上で、表現を磨く必要があったなと思っています。
また、先ほどの話にも通じるのですが、一つチームの中だけでのワクワクするObjectivesだと、タテヨコの連携にはつながりが発生しませんでした。ただ、やはりGDP全体でOKRを導入すれば、連携を生み出し価値が生まれそうな手応えを感じましたね。
奥田
テスト導入で手ごたえを感じた上で、いよいよGDP全体導入ですね。どのようなプロセスで進めましたか?
神崎様
テスト導入の振り返りをGDPのトップに伝えたことで、コンセンサスがとれました。そこで導入に向けて、プロジェクトチームを作りました。
これまでのインプットと自チームの知見をまとめて、OKRのガイドラインを資料化しました。そのうえで、各チームへガイドラインを展開しました。
奥田
私のコンサルティングの場でも、OKR導入時に推進チームは重要だと考えています。
実際に全体に展開する上で、苦労されたことはありますか?
神崎様
GDPは職種としてはエンジニアが多いですが、オペレーションのチームもあります。OKR導入について、当初は全チームが大賛成というわけではなく、疑問をもっているチームもありました。トップとコンセンサスが取れていたので、プロジェクトチームはもちろんトップも丁寧に説明をして、なんとか理解をしてもらいながら動かしていきました。
OKR運用で改めて感じた対話の重要性
奥田
導入後、どのようにOKRを設定していますか?
神崎様
OKRは個人単位ではなく、チーム単位で設定しています。
チームの上位の事業単位は年1回設定し、それに対して3か月に一度チーム単位で設定します。チームリーダー同士は、お互いにこんなものにしようかなと思っているくらいの段階から対話を始めていき、連携、調整しながら決定しています。
奥田
チーム単位で設定されているのですね。運用はどのようにされていますか?
神崎様
運用段階では他チームのOKRを含めて、全体に可視化されています。
ガイドラインで、チェックイン、ウィンセッションを推奨していますので、多くのチームが高頻度で実施していると思います。また進捗共有会をチーム内、外のメンバーを呼んで、実施しているところもあります。
奥田
高頻度のコミュニケーションを中心とした運用がOKRの成否を握りますよね。実際に導入、運用を進めてみて、どのような効果をお感じですか?
神崎様
「重要なことを絞る」という考え方として根付いていきました。例えば、開発チームには事業からのオーダーが重要度が曖昧な状態で降ってきます。これまでであれば、重要度が擦り合わないまま着手してしまうこともありました。しかしOKRのおかげで、重要な項目を絞れていますので、コミットがそろいつつあります。そういった状況下で、横のチーム連携が生まれてきているとも感じています。
奥田
たしかに、重要度が明確でなければ、成果に直結しづらい仕事で手一杯になることはありますね。OKRで重要度を絞りこむことで、明確になるので連携も生まれやすくなりますね。
一方で、OKRを運用している中、現在はどのような課題がありますか?
神崎様
OKRを導入したことで効果はでていますが、やっぱり難しいし、常に改善したくなりますね。
個人的には、OKRの根本には対話の重要性があると思っています。OKRの思想は、リーダー同士、ボトムとトップ、チーム内の対話にこそあると思います。
お互いの進捗状況確認の会話は増えてきましたが、本当の意味での課題共有、コラボレーション促進の対話はまだまだこれからだとも感じています。
奥田
OKRにおいて、対話は重要ですよね。私も「OKRはコミュニケーショ・ツール」だと考えています。
神崎様
そうですよね。今ではGDPも150人規模の組織になりました。OKRをさらに活用して、対話を進めたいと思います。
あとがき
OKRのテスト導入を経て、本格導入、運用を進めているグロービス・デジタル・プラットフォームさま。実際にご自身でインプットから始めて導入、運用しているからこそ、今の効果に満足せず、これからの課題をお感じなのだと感じました。ご苦労も含めて詳しくお聞かせいただき、ありがとうございました。
グロービス・デジタル・プラットフォーム 組織概要
グロービス・デジタル・プラットフォーム 組織概要
デジタル・テクノロジーを用い、人材育成に新たな価値を創出します。定額制動画学習サービス「グロービス学び放題」(日本語・英語・中国語)をはじめ、内定者/新人育成サービスなど、良質なデジタルサービスで効率的かつ効果的な能力開発の機会を提供します。
はじめにOKRを導入しているGDPについてお聞かせください。