OKR(Objectives and Key Results)はチームのベクトルを合わせ成果を最大化するための目標管理ツールですが、実際チームにどのように導入、設定するのか?のご相談を受けることが多くあります。
そこで、チームビルディングを行いながら、OKR(Objectives and Key Results)を導入した合宿形式のワークショップの事例をご紹介します。
ワークショップの概要
今回、このワークショップに参加したのは、関西を中心に活動している団体「BOY MEETS ART」。
「アートに恋に落ちた少年」を意味する2018年12月に発足した団体で、『アーティストが表現者として生きていける世界を創る』ことをミッションに活動をしています。
合宿場所は、大阪の中崎町にある「LINDA HOSTEL 106」。
2019年6月に開業したHOSTEL / CAFÉ & BAR / EVENT / ACTIVITY と4つの機能を持つ、”共につくる、完結することのない宿泊施設” です。
それでは、一泊二日形式の合宿形式ワークショップについて、時系列でご紹介していきます。
1日目
はじめに
そもそもチームとは何か?からスタート。
わざわざ複数の人が集まってチームを作る理由は、一人では成し遂げられないような大きな目的を協力して達成することを目指すことです。
この共通理解がチームで成果を出すためには欠かせないため、当たり前のようですが改めて最初にします。
その上で二日間のスケジュールとグランドルールの説明を行います。
【グランドルール】
◆批判厳禁
自己開示と相互理解のために、他人の意見、考えを批判せずに受け止めましょう
◆時間を守る
“Quick & Dirty” 完璧でなくても良いので時間内に仕上げることが大切です
もし制限時間より早く終わった場合は、時間内にさらに磨きあげましょう
◆グッド・リアクション
他者の意見には大きく前向きなリアクションを心がけましょう
◆とにかく楽しもう
ポジティブに楽しむ姿勢を忘れずに
そして、参加者が合宿に臨む素直な気持ちを表明して、いよいよ本編に入ります。
まずはポジティブな感情を持つこと、相互に理解し合うことからスタートし、その上でチームで目指したい姿を決めることが一日目のゴールです。
陽口ワーク
陽口は「ひなくち」と読みます。
陰口とは、当人がいないところで批判や悪口を言うことですが、陽口はこの反対で当人がいないところで承認、賞賛を言うことです。
具体的には、一人が黙って下を向くいて存在を消す状態を仮想で作り、他のメンバーが「〇〇いないから言うけど・・・」で始めてその人の陽口、つまり、ポジティブな承認、賞賛を2分間言い続けることを行います。
2分間が終わると、言われていた人は顔を上げて陽口を2分間聞いた感想を述べます。
このワークによって、自分がいかに周りに見てもらっているか、承認されているか、を理解すること、また自分の気づいていなかった強みを認識することができます。さらに、他のメンバーに対してポジティブな気持ちを持つきっかけになります。
またOKRの運用で欠かせない「ウィンセッション」の効果を体感してもらう目的もあります。
MVPインタビュー
MVPになったつもりで、直近の活動の中で自分が一番嬉しかった、楽しかったといったポジティブな経験や出来事をインタビュー形式で語ってもらいます。
日常の活動の中ではモヤモヤ、イライラすることもありますが、一番ポジティブな感情をリアルに思い出し言語化します。言語化したものをインタビュアーが掘り下げることで、仕事している意義や楽しさを改めて実感できます。
さらにインタビュアー含め聞いている人は、その人が何に対してポジティブな感情を抱くのかを理解することができ、相互理解が深まっていきます。
バリューづくり
バリューとは、チームとして大切にすべき価値観であり、行動する判断基準や指針ともなるため行動指針と言われることもあります。
判断基準を全てルール化することは現実的ではありません。そのため、各人が適切に判断し行動するためにバリューを決めることが大切になります。
具体的には40個のバリュー、価値観の候補となるワードの中から各自で最重要と思うものを3つ選び出し、付箋に書きます。
各自が選んだ理由を全員に共有した上で、ワードそのものだけでなく選んだ理由も含め近いものをグループ化していきます。
そして、グループ化された中からチームとして大事にすべきバリューを自分たちの言葉に置き換えていきます。
この段階では仮決定として、ミッション、ビジョンの作成に移りました。
MVVづくり
MVVとはミッション、ビジョン、バリューの略です。
ここまで相互理解を深めたメンバーでチームの目指すべき方向性を決めていきます。
すでに決めているチームは新たに作らなくても良いのですが、改めて各自でどのようなMVVが良いか、今のMVVをどのように理解しているか、を共有します。
MVVについて考え、話し合う中で、本当に自分たちの目指す方向が言語化され、本当の意味で浸透することになります。
実際に今回もミッションはすでに存在していたのですが、合宿前から具体的に整理したいと考えていながらも、できていなかったそうです。
今回の合宿でメンバー全員で話し合うことで、より具体的で自分たちがワクワクできるMVVが仕上がりました。
MVVが完成し、1日目のワークは完了です。
ワーク完了後は、時間を気にすることなく本日の内容ふくめメンバーでチームのことを語りあかせることも合宿形式ならではの良さです。
2日目
1日目の振り返り
まずは2日目を始めるにあたっての現在の気持ちを共有して、前日の振り返りからスタートです。
特に昨日作り上げたMVVを全員で読み合わせ、限られた時間の中でつくりあげたものに対する理解、納得を確認しました。
そして、MVVは遠くの未来に対するものでありますので、今から具体的に進めるために近い未来の目的、目標が必要であることを説明し、2日目の本題に入ります。
KPT
今後の目的、目標を決める上で大切なことの一つに、これまでの振り返りがあります。
そこで今回はKPT(Keep、Problem、Tryの略)という手法を使って振り返りを行いました。
まずは直近3か月の活動について、全員がK(良かったこと、続けたいこと)、P(辞めたいこと、問題点)を各自で付箋に書いたうえで、共有します。疑問点があればその場で質問し合うこと、他人のK、Pを見て思いついたことは追加すること、も同時に行います。
その上で、T(新たにしたいこと、改善したいこと)を各自で付箋に書いたうえで、共有します。
そして、共有されたものの中から、スグに行いたいもの、時間がかかるが行いたいもの、を分けます。
本来のKPTであればこの段階で、Tを実行施策にまで落とし込むのですが、今回はこの後のOKRを設定したのちに落とし込みを行うため、Tを整理するところまでで終了します。
OKRの設定
最後は、OKRを設定していきますが、全体OKRを設定し、そのあとに役割ごとのOKRを設定していきます。
まずはOKRについての解説資料を読み込みながら、OKRを理解します。
そして、各自でこれまでのMVVやKPTを思い返しながら3か月後のOKRを設定します。
設定したもののうちObjectivesを全員で共有し、それぞれの疑問を解消しながら全員で良いと思ったものを選んでいきます。今回は大まかに2つのObjectivesが選ばれました。
その2つについて議論を深めていくのですが、方向性は一致してきたもののなかなか最終決定ができませんでした。このような場合は先にKRを決めていくことも一つの解決策です。実際にどのようなKRが自分たちが目指す指標であるかを検討することで、Objectivesも明確になります。
このようにして全体のOKRが決定しました。
全体のOKRから二つの役割ごとのチームに分かれ、各OKRを同じ流れで決めていきます。この段階で先ほど実施したKPTのTについても具体化します。各チームのKRを追いかけるために必要なTを選び抜くことが大切になります。KRを決定することで、Tの中で優先度に応じて取捨選択することになります。
そしてそれぞれのできたOKRを共有し、全体と各チーム、チーム同士でヌケモレがないか擦り合わせて、OKRが完成しました。
OKRが完成した上で、改めてMVVを見直し、相互の関係に齟齬がないかを確認し、最後に2日間の振り返りを行い、終了しました。
参加者の感想
2日間通じた参加者の満足度は5段階評価で80%が「5」と非常に高い結果となりました。
また、この合宿を他者に勧めたいかについては全員が「5」と言う結果からも満足いただけていることが分かりました。
参加者の感想(アンケートより)
「やるべきことが明確化してとにかくモチベーションに繋がった。
MVV決めたあと、OKRを決めることでさらにMVVを見直すことができるような道筋ができていて、小さな目的が明確になると同時に大きな目標にも近づいていると実感できるところがやる気に繋がると思いました。」
「『忘れてたやりたかったことを思い出させてくれたこと』『改善策も出たので、アクション踏めること』が特に大きかったです。」
「個人の価値観を相互に理解している上で、目指す像が短時間で見えた時、より一層チームとして一緒に走りたいと思えた。」
「自分のチームは企業案件を取りにいくという文字列だけ見ると漠然としたことで、やる気はあったけど、アクションが見えず、遠い先の事と思っていたので踏み出しにくかったが、今回、目標を逆算して逆算して言語化した結果、今日からのアクションが見え、遠い先の事だったのが、近い様に思えてきて、現実味が増した。」
OKR導入に向けて
メンバー同士が自己開示をして相互に理解し合う、そして共通の目的に向かって進むためにじっくり対話することが、OKRを導入しチームが成功するには欠かせません。
そして導入がゴールではなく、チーム力を高め結果として成果が最大化するためには、運用が大切です。
導入、設定の段階で、チーム力を上げる対話の仕組みを取り入れることで、OKRは一早く機能します。そのために、今回のような合宿やオフサイトミーティング形式を取ることは有効な手段となります。
チームの状況、課題、規模などに応じて、どのような仕組みを盛り込むべきか?は変わってきます。今回のプランを参考に自社に合った形にカスタマイズしましょう。
詳しく検討したい方は、ぜひお気軽にご相談ください。