「馬を水飲み場まで連れて行くことはできるが、水を飲ませることはできない。」
これは部下の育成においても同様のことが言えます。厳しい言葉、報酬や厳罰を用いて部下を動かそうとしても部下は動きません。自分で必要性に気が付けば自ずと動きます。そのため『指示』ではなく『質問』は、部下の育成において重要なスキルの一つです。
OKRは組織の目的に向かうための目標管理であり、従業員が組織の目的に向かって動くことで初めて効果を発揮します。そのため、OKRの運用で毎週行われる1on1において『質問』のスキルは重要となってきます。
「質問」が持つ部下育成の効果
フィードバックにおいて「指示」ではなく、「質問」をすることが必要になるのですが、「質問」をすることで何ができるようになるのでしょうか。
①情報を収集できる
質問の最もわかりやすい効果が情報収集です。フィードバックであれば、今の進捗状況や部下の見解を確認することができます。同じ情報に基づいて話を進めることができるだけでなく、双方に聞きあうことで事実の誤認や抜け漏れを防ぐこともできます。
②関心を伝達できる
質問をすることによって、関心、興味があるということを伝えることができます。上司が関心を持っている内容だと伝わることで、部下はその内容への意識が高まります。つまり、重要なことについて質問すれば重要なことに部下は集中して取り組むようになるということです。仮に上司が重箱の隅をつつくような質問を繰り返せば、部下も重箱の隅を意識するようになっています。
③考察を促進できる
部下の考えが及んでいない、深まっていない内容について質問をすることで、部下はさらに考察するようになります。理詰めで考えることや本質的な問題を解決するような部下を育てるためには、深い考察を求めることが重要なことは言うまでもありません。
1on1に必要な「質問」の作法
部下育成において「質問」の効果を発揮するには、ただ「質問」をすればよいというものではありません。良い質問には作法が存在します。
①具体的である
「頑張っている?」「アレどうなっているの?」「早めにできそう?」などあいまいな質問では、部下もあいまいな答えをするしかできないです。また、上司と部下で質問内容についての理解がズレが生じやすいため、回答にもズレが生じてしまいます。
「先週の売上未達成でしたが、要因は何ですか?」「○○の開発の進捗はどこまですすんでいますか?」「今週金曜日までのタスクですが、水曜日に期限を前倒しするにはどのようにすれば良いと思いますか」など具体的にすることで、部下との認識がズレないため、質問の効果が発揮されやすいです。
②オープン・クエスチョンである
「来週までにできるよね?」「やるの?やらないの?」など「はい、いいえ」など選択肢を制限する質問であるクローズ・クエスチョンでは、部下は考察を深めることはできません。また、こういった質問は得てして上司の意図に沿った回答への誘導になりがちです。
「なぜ?」「どのように?」などオープン・クエスチョンでの質問をすることで、部下は回答するために考察を深めることになります。また、上司の予期せぬ回答が得られる、つまり予定調和の会話にならないため、時として新たな価値や課題の発見につながることにもなります。
③ロジカルである
「プロジェクトの進捗状況はどうなってる?」➡「遅延の原因は何だと思う?」➡「来週までに何をすれば良いと思う?」➡「そのための課題は?」などのように一連の流れがロジカルになっていると、部下は考察がしやすいです。
また、部下は自分自身でこのように考えられる力をつけることにも役立ちます。課題を解決すること、課題を発見することをロジカルに身に着けることで、部下はいち早く成長することができます。