マネジメントの中でも最重要課題の一つとも言える目標管理ですが、今日までどのように発展してきたのでしょうか。
『科学的管理法』
現在の目標管理の歴史は、19世紀末にフレデリック・W・テイラーの提唱した『科学的管理法』がスタートと言えるでしょう。彼は「科学的管理の父」とも呼ばれています。
テイラーが提唱する以前は勘や経験に基づく「成り行き管理」がなされていました。その結果、経営者にとっては労働者の怠業に不信があり、労働者にとっては経営者への賃金決定に不信があり、相互不信の状態になっていました。
この相互不信を解決すべくテイラーが客観的に管理する必要性から科学的に管理する必要性を説いたものが「科学的管理法」です。
- 課業管理
- 作業の標準化
- 作業管理のために最適な組織形態
客観的に測定するためにの基準に「課業(task)」という概念を設定します。そして作業をストップウォッチなどで時間を科学的に管理された労働者により、生産性の最大化を図るというものです。
労働者を機械のように管理しているとの批判されることもありますが、目標管理のみならず現在の経営学の基礎になっている部分が多いです。
『MBO』
P.F.ドラッガーが提唱した「MBO」は「Management by Objectives」の略称で日本語で直訳すると「目標による管理」つまり目標管理そのものとも言えます。
目標を設定することによって始めて,事業は晴雨,風向き,自己に翻弄されることなく,達すべきところに達することができる(現代の経営)
「現代の経営」の中で、このように述べマネジメントにおいて最初にすべきことの一つに目標設定を上げています。
経営者は目標を設定することで成り行きや自分の甘さに惑わされることなく自己で統制することができるようになり、より強い動機づけにつながるとも述べています。つまり、目標があることによって、適当にしておこうとはならず、最善をつくそうとなるというわけです。
また、ドラッカーの掲げるMBOは本来、「Management by Objectives」と「and self-control」をセットで示しています。つまり目標管理は自己統制がセットということです。
自己統制によって人々の仕事の達成目標はいっそう高まり、視野もそれに伴ってより広いものになる。目標設定による経営は、経営チームの志向の一致、努力の一致を生み出すことは前述したとおりであるが、そのような効果を必要としない企業においても、少なくとも自己統制による経営を可能にするために必要である(現代の経営)
同時に自己統制が必要な理由は、組織目標への貢献と個人の自己実現を結びつけるためであるとも述べています。このように提唱されているMBOではありますが、現在の日本では、人事評価、査定のツールになってしまっていることが多いことは残念な側面であります。
『BSC』
ロバート・S・キャプランとデビット・P・ノートン氏が提唱した「BSC」は「 Balanced Scorecard」の略です。
企業の目標は利益など財務的な結果だけを見るだけでは達成できないと考え、「財務の視点」「顧客の視点」「内部ビジネスプロセスの視点」「学習と成長の視点」の4つの視点ををバランスよく組み合わせることが「BSC」では求められます。
そして、経営戦略は組織の最終的な財務的な利益と密接に関係しており、4つの視点で組み合わせることにより組織の隅々まで組織目標と結びついた構造になっています。
つまり、BSCには、「組織の目標管理システム」と「組織の戦略を実行に移すためのシステム」という 2 つの側面があります。
「BSC」は同時に目標とビジョンを達成するための道筋を図示する「戦略マップ」が必要となります。戦略マップは目標達成とアクションの因果関係や関連を図式化するもので、経営者および従業員の双方にとって、戦略の全体像を把握できるため非常に有効です。
『OKR』
Googleで採用されていることで有名となった「OKR」は「Objectives and Key Results」の略で「目的と重要な目標」や「目標と主要な成果」と訳されることがおおいです。
もともとはインテルのCEOであったアンディ・グローブがMBOを改良し、同社で採用したのが始まりです。
彼の著書「HIGH OUTPUT MANAGEMENT」によれば、従来の「MBO」の問題点として、目先の目標を意識しすぎて、目的を見失くことにつながっていると考え、本来の目標管理は下記のたった2つの質問に答えられればよいとしました。
わたしはどこへ行きたいか?(つまり、目的)
そこへ到達するためには自分のペースをどう決めるか?(つまり、マイルストーン:重要な目標)
そして目的、目標を重要なものだけに絞ることで本当に達成すべきことに注力できるようにしました。さらに、四半期ごと(早ければ毎月)と高頻度に設定することにしています。インテルが変化のスピードに速い業界であったことも一因と思われますが、それだけでなく迅速なフィードバックを重視していたためでもあります。
この考え方を「OKR」としてグーグルが創業間もないころから巨大企業となった現在まで採用し、その後多くの企業が用いるようになりました。