課長が燃え尽きる主な要因は業務量ではなく、キャリアの行き止まり感と役割の曖昧さであることが、当社調査「燃え尽き課長の実態調査(2025年11月)」で明らかになりました。人事が取り組むべきは負担軽減より仕組みの見直しです。この記事では、調査データをもとに燃え尽きの本当の要因と、人事にできる具体的な対策を解説します。
【この記事でわかること】
- データで見る「管理職の燃え尽き」の深刻な実態と組織への影響
- 業務量よりもはるかに強く燃え尽きに影響する「2つの心理的要因」
- なぜ課長職において「キャリアの行き止まり感」と「役割の曖昧さ」が生じるのか
- モチベーションを回復させるために、人事が優先して見直すべき3つの仕組み
「うちの課長たち、なんか最近元気がないんだよね」
人事担当者や経営者から、こういった声をよく聞きます。忙しそうにしている、でも成果が出ていない。そのうち、突然退職を申し出てくる。
管理職の燃え尽きの原因として真っ先に思い浮かぶのは「仕事量が多すぎる」ではないでしょうか。であれば、業務を減らせば解決するはずです。しかし現実には、業務を整理しても課長の疲弊が止まらないケースが少なくありません。
実は、課長の燃え尽きには、業務量とは別の見落とされがちな要因があります。
課長の3人に1人が燃え尽き傾向
株式会社タバネルが課長400名を対象に実施した「燃え尽き課長の実態調査(2025年11月)」」では、燃え尽きを示す5つの項目すべてで35%を超える回答が得られました。

- 仕事を終えると、消耗していると感じる:41%
- 自分の仕事に無力感を感じる:38%
- 気力が続かず、仕事に取りかかるのがしんどい:36%
- 自分の仕事は報われていないと感じる:35%
- 自分の仕事に意味や価値を感じにくい:35%
さらに、5項目のうち3項目以上に該当する課長の割合は35%。3人に1人以上が、燃え尽きの状態にあると言えます。
これだけ多くの課長が燃え尽きているとなれば、組織への影響は深刻です。同調査では、課長の半数(53%)がやりがいを感じていないという結果も出ています。
やりがいのある課長とそうでない課長では、部下との関係構築、成長実感、会社への推奨意向すべてに大きな差が生まれており、管理職の燃え尽きは課長個人の問題にとどまりません。
管理職の燃え尽きの最大の要因は「忙しさ」ではなかった
では、燃え尽きの要因は何でしょうか。同調査で重回帰分析を行ったところ、意外な結果が出ました。

燃え尽きへの影響度を測る標準回帰係数(β)を見ると、
- キャリアの行き止まり感:β=0.40
- 役割の曖昧さ:β=0.34
- 役割葛藤:β=0.12
- 業務負担:β=0.10
- 感情的負荷:統計的に有意な影響なし
業務負担の影響(β=0.10)は、キャリアの行き止まり感(β=0.40)の4分の1以下です。つまり、管理職が燃え尽きる最大の原因は「忙しすぎること」ではなく、将来が見えないことと役割がはっきりしないことなのです。
要因① キャリアの行き止まり感
課長まで昇進したものの、全員が部長になれるわけではありません。将来が見いだせず、「この先、自分はどこにも進めない」というキャリアへの行き止まりを感じている状態が、課長の燃え尽きを引き起こしています。
調査では以下のような実態が明らかになりました。

- 現在の役職に留まっており、昇進の見込みが立っていない:48%
- 以前と比べて、仕事への意欲や熱意が低下している:43%
- 現在の業務で、新たな能力やスキルが身についていない:42%
- 社内での自分の将来性やキャリアに不安がある:37%
注目すべきは、意欲の低下だけでなく学習意欲まで失っている点です。成長実感のない状態で仕事を続けることは、消耗を加速させます。
多くの企業では、課長へのキャリア支援が手薄になりがちです。若手や部下の育成には力を入れる一方、課長自身のキャリアは、放置、後回しにされているケースが少なくありません。
しかし、自らのキャリアに行き止まり感を抱えたまま、部下のキャリアを支援することは難しい。管理職のキャリア支援は、人事が取り組むべき優先課題のひとつです。
要因② 役割の曖昧さ
課長の燃え尽きに大きな影響を及ぼすもう一つの要因は、課長自身が「組織として自分に何を期待されているのか」を把握できていない状態です。
環境変化に伴い、管理職に求められる役割は年々増えています。心理的安全性、キャリア自律支援、パワハラ対応、リモートワーク管理、DX推進——。こうした新しい課題が次々と課長に降ってくる一方、「何をやめるか」が決まらないまま、役割だけが際限なく膨らんでいきます。
調査では以下のような実態が明らかになりました。

- 他部門との役割や責任の線引きがあいまいだ:44%
- 上位方針があいまいで、優先すべきことが分かりにくい:39%
- 自分の権限の範囲がはっきりしていない:34%
- 自分に期待されている成果が分かりにくい:33%
役割が曖昧なまま負担だけが増えれば、課長はどこに力を注げばいいかわからなくなります。頑張っているのに手応えがない。その感覚の積み重ねが、燃え尽きへとつながります。
「管理職を頑張らせる」だけでは解決しない
ここまで見てきた2つの要因に共通しているのは、どちらも課長個人の努力では解決できないという点です。
キャリアの行き止まり感は、会社の人事制度や上司との対話の仕組みがなければ解消できません。役割の曖昧さは、組織としての役割定義と、経営から現場への方針の伝達なしには整理できません。
管理職の燃え尽き対策として必要なのは、激励でも研修の追加でもありません。マネジメントの仕組み自体を見直すことです。
1. 課長の役割を再定義する
戦略の変化に合わせて、課長が担うべき役割と担わなくていい役割を明確にする。「やること」を増やすのではなく、「やらないこと」を決める視点が重要です。
2. 課長が意思を込められる目標管理をつくる
調査では、やりがいの高い課長ほど「課の目標に自分の意思が込められている」と回答しています。押しつけの目標ではなく、課長自身が意味を感じられる目標設定の仕組みが、燃え尽きを防ぐ資源になります。OKRはこの目標管理の仕組みとして有効な手法のひとつです。
3. 課長が相談できる環境をつくる
上司への相談、横のつながり、人事との対話。こうした「仕事の資源」が充実しているほど、課長のやりがいは高まります。課長を孤立させない環境設計が、人事の重要な役割です。
課長が燃え尽きるのは、弱いからでも怠けているからでもありません。仕組みが追いついていないのです。
「うちの課長たちが元気ない」と感じているなら、業務量を見直す前に、キャリアの見通しと役割の明確さを点検してみてください。そこに、管理職の燃え尽きを防ぐための手がかりがあるはずです。
よくある質問
Q. 管理職の燃え尽きを防ぐために人事ができることは?
役割の再定義、課長が意思を込められる目標管理の仕組みづくり、相談できる環境の整備の3点が出発点です。業務負担を減らすことより、課長が「意味のある負担」を感じられる状態をつくることが重要です。
Q. 管理職の燃え尽きと業務量は関係ないのか?
無関係ではありませんが、影響は限定的です。タバネルの調査(n=400)では業務負担の影響係数はβ=0.10で、キャリアの行き止まり感(β=0.40)の4分の1以下という結果でした。業務量の削減だけでは燃え尽きの根本原因には対処できません。
Q. 課長のやりがいが低いと、組織にどんな影響があるか?
「課長のやりがい実態調査(2025年3月)」では、やりがいのある課長とそうでない課長を比較すると、「今の会社を知人に勧められる」という推奨意向がやりがい上位で84%、下位で14%と大きく差が開いています。部下との協力関係や成長実感にも顕著な差があり、課長のやりがいは組織全体のパフォーマンスに直結します