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ワーク・エンゲージメントとJD-Rモデル:調査から見えた「やりがい」を最大化する組織の共通点

仕事に対する「やりがい」は、個人のモチベーションにとどまらず、企業の業績や定着率を左右する経営指標です。しかし当社の調査(2025年3月実施)では、組織の要である課長の53%が「仕事にやりがいを感じていない」という実態が明らかになりました。

この結果を読み解くために欠かせないのが、「ワーク・エンゲージメント」と「JD-Rモデル」という2つの概念です。どちらも組織行動論の研究に裏打ちされた実践的なフレームワークで、やりがいの構造を整理し、現場の打ち手を考える上で有効な視点を提供してくれます。

【この記事でわかること】

  • 仕事のやりがいと「ワーク・エンゲージメント」
  • JD-Rモデルが示す「やりがいを決定する3つの要素」
  • 燃え尽きる人と活力を得る人の違いを生む仕組み
  • 調査データから見えた、やりがいを高める組織の共通点

なぜ今、組織に「仕事のやりがい」が必要なのか?

多くの企業が「働き方改革」で労働時間を削減してきましたが、それだけでは「働きがい」は生まれません。

「課長の半数以上がやりがいを感じていない」という調査結果は、やりがいが個人の資質や努力だけでは左右できない領域にある問題だということを示しています。この構造を理解するフレームワークが、「ワーク・エンゲージメント」と「JD-Rモデル」です。


ワーク・エンゲージメントとは?

ワーク・エンゲージメントとは、仕事に対して前向きで、熱意を持ち、いきいきと没頭している状態を指します。ユトレヒト大学のウィルマー・シャウフェリ教授らが提唱した概念で、以下の3要素で構成されます。

活力(Vigor): 仕事から活力を得ていきいきとしている

熱意(Dedication): 仕事に誇りと意義を感じる

没頭(Absorption): 時間を忘れるほど集中している

【調査の視点】

当社の調査でも、この3要素(6設問)の平均値と「仕事のやりがい」には0.83という強い相関が見られました。ワーク・エンゲージメントを高めることが、働きがい改善の実践的な入口になります。


JD-Rモデル:やりがいを決定する3つの要素

なぜ同じ仕事内容でも、燃え尽きる人と活力を得る人がいるのでしょうか?そのメカニズムを説明するのがJD-Rモデル(仕事要求度-資源モデル)です。

仕事における「負担」と「資源」のバランスがやりがいを左右するという考え方で、個人の内面だけでなく、組織環境の設計がいかに重要かを示しています。

  1. 仕事の要求度(負担とプレッシャー)

仕事を進める上での心理的・肉体的負担(プレッシャー、時間外労働など)を指します。当社の調査では、「負担の大きさだけでやりがいが下がるわけではない」という結果が出ています。精神的な重圧はマイナスに作用しますが、高い成果への期待は、適切な「資源」があればやりがいを押し上げる要因にもなり得ます。

  1. 仕事の資源(サポート環境)

負担を軽減し、成長を促す外部環境です。具体的には、裁量権(コントロール)、上司の支援・相談などが挙げられます。

【調査の視点】

やりがいが高い課長と低い課長で最も差がついたのは「裁量権」よりも「上司や他部署に相談できる環境」でした。1on1を導入しても形骸化するケースが多いのは、この「相談という資源」が形式的な対話にとどまり、実質的な解決に結びついていないためと考えられます。

  1. 個人の資源(心理的資本)

本人の内面にあるポジティブな心理状態(自己効力感、希望、レジリエンス、楽観性)です。これらは個人の性格ではなく「開発可能な能力」とされています。相談しやすい環境(仕事の資源)があることで個人の自信(個人の資源)が高まり、さらに前向きに挑戦できるという「正のスパイラル」が生まれます。


調査から見えた、やりがいを高める組織の共通点

JD-Rモデルの視点から調査結果を整理すると、やりがいの高い組織には3つの共通点が見えてきます。

縦横に相談できるルートがある

直属の上司だけでなく、他部署や経営層と双方向で対話できる機会が、組織の公式な仕組みとして設けられています。

目標設定に自分の意思が入る余地がある

上意下達の目標をこなすだけでなく、担当者自身が目標に意思を込め、取捨選択(やらないことを決める)できる仕組みになっています。

未完成の段階で相談することができる

完璧な状態でなくても相談や支援をを求めることで、早めに必要な協力やアドバイスを得られ、結果的にやりがいにつながります。


まとめ:負担を減らすより「資源」を活かす

JD-Rモデルが示すのは、「負担(要求度)をゼロにすることではなく、それを支える資源をいかに増やすか」の重要性です。

やりがいは個人の努力や気持ちの問題ではなく、組織の設計によって大きく左右されます。「資源」を循環させ、個人の強みを引き出すマネジメントの再設計こそが、持続可能な企業成長の鍵となります。

(参考)
「令和元年版 労働経済の分析 ー人手不足の下での『働き方』をめぐる課題についてー」(厚生労働省)
組織行動論の考え方・使い方-第2版(服部泰宏 著)
「Q&Aで学ぶワーク・エンゲイジメント(島津明人 編集代表 )

 

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